日本は世界一のマグロ消費国。
その日本人が大好きなマグロを、
遥かな海の果てまで、命を賭けて追う男達がいる 。
いったん航海に出るとそこは360度 海。
船そのものが独立国となる。 陸の掟は通用しない。
いかなるトラブルも、船内だけで解決しなければならない。
また、出漁のたびに同じメンバーが乗船するとは限らない。
まったく見ず知らずの男達が二十数名、二年近く同じ船で過ごす。
ある男は言った。
「監獄生活の方がよっぽど人間らしく、マシだ。」 と。
出航 。
港に演歌が鳴り響く。
出航時間に合わせて乗組員は三時間前に集合。
最後の出漁準備に取りかかる。
一時間くらい前になると、家族、友人、恋人が見送りに来る。
出航の時間がき、汽笛が鳴り、船がゆっくり港を離れる。
見送る人達の姿がだんだん小さくなり、やがて一本の筋になる。
船が港を出た時から、見送りの人達の姿が小さくなっていくのに
逆に自分の心の中ではどんどん大きくなる。
どんどん、どんどん大きくなる。
この足は二年近く、日本の土を踏むことはない 。
日本人が大好きなマグロ。
そのマグロを世界中の海を股にかけ
今も命を賭けて追う男達がいる 。